ウルトラセブンと喧嘩


明け方から腹立たしい事があった。

何があったか、ここでは書かないが、とにかく腹が立って仕方がない。

怒りをしずめるためにコーヒーを飲んでいたら、ふと数年前に購入した「ウルトラセブン」のフィギュアが目が入った。

こっちはただ見ているだけなのに、ウルトラセブンの野郎ときたら、こちらを睨みつけてきやがる。

嗚呼、忌々しい。

地球人を救うヒーローだと世間様からチヤホヤされているが、実態は地球人のフリをして密かに地球征服を目論んでいるのだろう?

われわれ地球人は、M78星雲による壮大なプロパガンダによって騙されているに違いない。

そう思ってウルトラセブンについて調べてみる事にした。

セブンの悪事を暴き、一刻も早く皆に伝えなくてはいけない。

こんな事を僕は朝から真剣に考えていたのだから「中二病」という言葉は確かに存在する。

それはさておき、

百聞は一見にしかず、ウルトラセブンを実際に観てみることした。

49話もあるから、いきなり最終話を観て決着をつけてやろう。

しかし、そんな気持ちとは裏腹に、このあと僕はウルトラセブンに魅せられてしまうのである。

数々の戦いで満身創痍の「モロボシ・ダン」ことウルトラセブン。

このまま戦いを続ければ、命の保証はないと、故郷の上司から宣告をうける。

それでも彼は地球人のために立ち上がり、自分の命を犠牲にして立ち上がろうとする。

そしてクライマックス。ここからが秀逸だった。

モロボシ・ダンが、ヒロインであるアンヌ隊員に、自身がウルトラセブンであることを告げるシーン。

ダンの告白と同時にシューマンのピアノ協奏曲が鳴り響く。特撮とクラシックの融合が最高にイカす。

モロボシ・ダン:「僕は……僕はね、人間じゃないんだよ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ。ビックリしただろう?」

アンヌ隊員:「ううん。人間であろうと、宇宙人であろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの。例えウルトラセブンでも」

モロボシ・ダン:「今話したとおり、僕はM78星雲に帰らなければならないんだ。西の空に明けの明星が輝くころ、一つの光が宇宙へ飛んでいく。それが僕なんだよ。」

アンヌ隊員の静止を振り切り、ダンは地球人を救うために最後の宿敵を倒しに行く。

ボロボロになりながらも、なんとか敵を倒し、西の空に飛び立つウルトラセブン。そこで、ピアノ協奏曲も同時にフィナーレを迎える。

“知ってるかい 忘れてはいけないことが
何億年も昔 星になった
どんな時代の どんな場所でも
同じように 見えるように”

というのは甲本ヒロトの詞だけれど、つまるところ、地球征服を目論んでるだなんて、甚だしい誤解であり、地球人の心に今でも生きているのは、他でもないウルトラセブンなのである。

僕はモロボシ・ダンのフィギュアを大切に戸棚にしまった。
西の空には明けの明星が輝いている。